
計画的な出会い
ボクはアメリカ競馬に非常に関心があるので、毎年、早起きをしてFENの実況生中継を聞いているが、近年、テレビで録画中継されるようにもなったのはありがたい。
競馬場や場外発売所、またNでごらんになった方も多いだろう。
今年のケンタッキー・ダービーは31年ぶりという、あいにくの不良馬場になった。
砂が中心の日本のダートとちがい、アメリカのダートは土に近い構造なので、雨が降ると日本とは反対にタイムが遅くなる。
ズボッと脚が埋まるし、粘りつきもする。
また地盤が不安定になるので、バランスを非常に崩しやすい。
最初からガンガン飛ばす、いかにもアメリカらしいレースになったこともあり、勝ったパトリック・バレンズエラ騎乗のサンデーサイレンス(牡、父へイロー)は、さすがに直線フラフラしていた。
あるいは、それまで楽勝ばかりで、追われたことがほとんどなかったのも原因かもしれない。
ケンタッキー・ダービーを見てアイル(9着)を出してもいる。
ボクがしばしば行く南カリフォルニアが本拠なので、以前から興味深くみている人である。
ひとことでいえば、絶対に無理使いをしない調教師だ。
最近、日本人が買ったというナスルエルアラブ(牡5歳、GI4勝)のように、ヨーロッパから移籍してきた馬をゆっくり育てて活躍させることで定評のある名伯楽だが、最初から自分のところにいる馬でも、デビューは遅めだ。
3歳戦が盛んなアメリカでは珍しい存在といえる。
3冠レースを5週間で消化してしまうアメリカでは強行スケジュールが当たり前だが、ウィッティンガム厩舎だけは3冠は別にしてそれをしないという定評がある。
今回のサンデーサイレンスをみてもそれはわかる。
ライバルの多くが1、2週のレース間隔で臨んできたのに対し、同馬は4月8日のサンタアニタ・ダービー制覇から約1カ月間隔をあけた。
さらに、レース2週間前にチャーチルダウンズに入厩するという用意周到ぶりでもあった。
アメリカ競馬ではタフにレースを勝ち続けるのが名馬の見本という考え方が大勢を占めているが、サンデーサイレンスの勝利は余裕のあるスケジュールが大きくモノをいったにちがいない。
日本でも今週からGIが続く。
やはり余裕のあるスケジュールで進んできた馬が有利だろう。
安田記念のボクの騎乗馬はまだはっきりしないが、ジュネーブシンボリになるかもしれない。
この馬は、心身ともに若く、古馬になってからゆっくりということで、余裕を持って仕上げられてきた。
それでもまだ若さが抜け切らないでいるが、素質の良さに望みをかけている。
ボクの大レース初制覇は、昭和46年にカネヒムロで勝ったオークス。
その後も55年にケイキロク、58年にダイナカールで優勝しており、大変ゲンがいいレースである。
このレースの特性について語ろう。
オークスは過酷なレースだと思う。
4歳春の牝馬にとって、2400メートルを乗り切ることはきついのだ。
皐月賞、ダービーが同じ関東エリアで行われるのに対し、牝馬の春の2冠は、関東から関西(その逆も)へ転戦するという環境の変化にも耐えなければならない。
外国の多くで、オークスがダービーよりも距離が短くなっているのは、負担を軽くしようということだろう。
日本の場合、オークス馬でその後活躍している馬が少ないのは、オークスというレースの消耗度の激しさを物語っているのではないか。
非常にむずかしいレースでもある。
桜花賞が1600メートルということもあって、2400メートル戦、もしくはそれに近い距離のレースに出走している馬が少ないので、騎手は、果たして距離が持つかなという、半信半疑の気持ちになりがちなのだ。
それでも過去を振り返ってみれば、桜花賞馬の活躍が目立つように、例えマイラーでも、絶対能力に勝る馬が強いようである。
ステイヤーは概して奥手で、この時期まだ完成していないということがいえるかもしれない。
ジョッキーの役割としては、能力を信じて乗ることが一番だ。
そして、エネルギーの消耗を極力防ぐため、もまれない位置取りをしてうまく流れに乗ること。
これはどのレースにもあてはまるが、オークスでは特に要求される騎乗条件だ。
オークス3勝の中でも、自分自身で会心の騎乗だったといえるのがダイナカールである。
この時は中団より前の位置取りで、うまく流れに乗ることができた。
能力を信じて乗ることもできた。
4コーナーで2番手に上がり、早仕かけと受けとった人も多かったが、力があると信じていたからこそ、あの位置取りができたのだ。
今年のボクの騎乗馬はエバープロスパー。
一度も乗ったことがない馬だが、勝った前走の400万下条件戦(4月30日、東京、芝1800メートル)でボクはリーディング(4着)に乗って戦っている。
このレースで受けた彼女の印象は、日本の浅い芝向きの軽さがあるということ。
安田記念(初騎乗のバンブーメモリーで優勝)のインタビューでしゃべったように、知りすぎている馬よりも知らない馬の方が、かえってあれこれ考えずに乗れる分、いい結果が出るかもしれない。
絶対能力で勝っていそうなシャダイカグラを負かすのは困難なことだろうと思っているが、何とかしたいという気迫はある。
(5月16日)オークスは2400メートルのダービーに対して距離を短くしている。
レース体系が地区ごとに独立しているアメリカでも、2000メートルのケンタッキー・ダービーに対し、ケンタッキー・オークスは1800メートルといった具合に牝馬の負担を軽くしているケースが多い。
ダービー同様、2400メートルでオークスを行っている英ダービーはどんな展開になるか読めぬことが多い。
いよいよダービーである。
早い時期から多くの競走馬は、頂点のこのレースを目標にする。
ボクの場合も同じだ。
3歳の若駒に乗る時、「2400メートルはどうか」とか「4歳春の時点でどこまで完成するか」などと、まずダービーのことを考える。
ダービーは独特のムードが漂う。
その日の午前中からしていつもとはちがう雰囲気なのだ。
お唇箭のレースのパドックから、お客さんがソワソワしているのを、毎年肌で感じている。
騎手も非常に胸を締めつけられる。
ボクが初めてダービーに乗ったのは、デビュー3年目の昭和44年で、マスミノル(28頭中12番人気)という馬。
結果は優勝したダイシンボルガードから約9馬身差の10着だった。
我ながらいいレースができたとは思うが、レースが始まるまでは、緊張したものだ。
それから15年たった59年、シンボリルドルフで念願の初優勝をすることができたが、今でもダービーではプレッシャーがかかる。
アイルランドにしても、時期が日本より前者が半月、後者が2カ月遅くなっている点、救われているといえそう。
ただし、21日のオークスで落馬(サザンビーナス)があったように、20頭以上も出走してくれば、ふつうは一度や二度の道中の不利は覚悟して乗るし、馬も不利を克服するだけの精神力が要求される。
今年のダービーは各馬の力差がないだけに、特に騎手の腕にかかる比重は大きいだろう。
騎乗馬のアンシストリーは、ここにきての進境面でちょっと物足りない面があるが、チャンスはあるだろう。
次に、レースの特性に触れよう。
まずいえるのは、どんな展開になるか読めないということ。
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